積極的な情報開示が入社後を左右する

採用の本来の目的

求人難の現在では、採用すること(入社させること)が目的になりがちで、採用の本来の目的である人材によって自社を成長・発展させるという視点が疎かになりがちです。

しかし最近は、「採用と育成をどう連動させるか?」という考え方に着眼する傾向が高まってきているのも事実です。

今月も新潟と秋田で、企業様対象に採用関連の講演をさせていただく機会があったのですが、両講演共に「入社後の定着率を上げる施策などの話しを盛り込んで欲しい」というご依頼を受けました。

当社は創業以来、「社員の定着と活躍で、企業の成長を支援する」という事業ミッションを掲げています。
それは私が採用支援に携わってきた過去の経験から生まれたものです。

私のキャリアの中での反省点でもあるのですが、求職者に対して過度な期待を持たせるような採用広報や一方的に求職者を口説き切る採用を指南していました。

もちろん採用担当者にとって、求職者を口説くことは重要な使命であり、それ自体を否定するモノではありませんが、根も葉もない口説き方には問題があると考ています。

上記のような採用活動を行った結果、多くの早期離職者やローパフォーマーを創出していることに気付かされる出来事も多々ありました。

「採用成功=入社させること」、採用支援サービスとはそういうものだと思っていた私にとって、その出来事は大きなターニングポイントとなりました。

その結果当社設立にあたり、上記のようなミッションを掲げることになったのです。

採用時に自社の弱みや短所を伝えないと定着率は低下する

さて話を戻しますが、一般的に「入社後の定着率を上げる施策」とは、入社後の研修やフォローアップにあると考えがちですが、実はその前の採用プロセスに大きく起因していると考えられます。

定点観測をして、科学的な根拠・エビデンスを提示するまでに至っていないのであくまでも私自身の肌感覚ですが、採用プロセスにおいて自社の情報を積極的に開示してない場合、定着率が低下すると私は考えます。

あえて科学的な根拠があるとすれば、それは昨今採用関係者の中でも認知されつつある
「RJP(RealisticJobPreview)」というアメリカで実証研究がなされた理論です。

要は会社や仕事の情報を、強みや長所だけではなく弱みや短所までをよりリアルに学生や求職者に伝えるという考え方です。

それにより、

1.セルフスクリーニング効果(ミスマッチ辞退者促進)
2.コミットメント効果(合う求職者のロイヤリティ向上)
3.ワクチン効果(入社後の定着率・パフォーマンス向上)

という効能をもたらすという研究結果は既に実証されています。

人間関係や夫婦関係でもそうですが、良いところだけではなく相手の欠点までを含めて許容するということが、企業と学生・求職者との間にも言えるのではないでしょうか。

企業はありのままの会社の実態や仕事の大変さや厳しさなどを丁寧に伝えること、つまり自社のリアルを積極的に情報を開示することで「入社後の定着やパフォーマンス」を引上げるという視点に立つことが必要になってきているのです。

そういう意味では上場企業の「有価証券報告書」などは、法的に開示が定められているので、学生もそこで企業のリアルをある程度知ることができます。

しかし未上場企業の多くは、財務情報含め社員すら知らない会社の現状などが多く存在しているので、現実的に考えると障壁が高いと言えます。

当社で採用のご支援をさせていただく場合は、上場・未上場関係なく、積極的な情報開示をお願いします。

少し時間がかかるかもしれませんが、学生・求職者に対して積極的に情報を開示する方が、結果的に自社のため或いは社員のためであるという価値観を浸透させていきたいと考えています。