急激な売手市場化への変貌を遂げた2015卒採用。
この流れは2016卒採用で更に加速することが容易に想像できます。
併せてビジネスポテンシャル(ビジネスにおける基礎能力)における学生の二極化も顕著になってきています。
売手市場化、学生の二極化、更には採用スケジュールの変更という3つの大きな障壁が2016卒採用では重くのしかかってくるわけですが、そのことによって企業側にどんなリスクがあるか?それをどう乗り越えていけばよいか?について私なりの考えをまとめてみました。
まず考えられるリスクですが、ひとつは2015卒以上に内定辞退が増えるということ。
当たり前ですが、過去の売手市場下においても、この問題は避けて通れない課題です。
前述の通り学生の二極化が進行する中、例年以上に重複内定が増えることが予想されますので、大袈裟にいうと歴史的な内定辞退率(数)になるかもしれません。
併せて選考プロセス中の離脱も増えることも必至です。
それともうひとつ、売手市場下のリスクは入社後の定着率とパフォーマンスの低下です。
学生達は自分たちの就職活動が、例年に比べて有利か不利かをある程度認識していますので、売手市場を実感しつつある2016卒の学生達は、より知名度のある企業、より好待遇の企業に目が行きがちです。
企業との相性や、共感性、実際の業務内容への適合性といった、本来就職先を選ぶ上で重要な基準を後回しにして(深く考慮せず)企業スペック、つまり外部動機で企業選択をするようになります。
その結果入社後に組織の価値観や業務内容に違和感を感じ、早期の離職や退職はしないものの、なかなかパフォーマンスの上がらない腰掛的な社員を生み出してしまう可能性があるわけです。
選考プロセスにおける離脱や辞退よりも、企業にとってはこの現象の方が大きなリスクなのですが、現実的には目に見えにくいので案外その点に注力している企業は多くないというのが現状のようです。
ではそういったリスクを回避し、自社の採用を成功させるにはどうすれば良いのか?
細部まで考えればきりがありませんが、個人的に最も重要だと考えているのは「学生に、自分の意志で入社を決意させる」ことだと思います。
売手市場下では、採用情報が過多になりがちで、そもそも知らない企業やあまり興味のない企業の採用情報・企業情報に学生は目や耳を傾けません。
就職ナビ運営会社のアルゴリズムに誘導されプレエントリーはすれど、それ以上深いレベルで企業を研究しようとしないわけですから、入社する先の企業候補になるはずがありません。
仮にたまたまそういった企業の選考を通過して、内定を取得したとしても「承諾」する理由が見当たらないわけです。
そこで、学生に対して自社の情報を積極的に開示し、組織に属すること、業務を遂行することをシミュレーションさせた上で(セルフマッチング)、自分の意志で決めさせることが重要になってきます。
そのための自社情報の整理とコンテンツ化(ネガティブな情報も含め)、セルフマッチングを促す選考プログラム構築し、選考プロセスで極力学生との刷り合わせ(エンゲージマッチング)に時間を割くことが求められます。
何となく知名度や待遇で就職先を選ぶのではなく、自分の判断基準を明確にした上で開示されている情報を精査し自分の意志で決断することで、内定辞退と入社後のパフォーマンス低下をある程度未然に防ぐことができると考えています。