「価値観の押し売りが、企業の人材育成と採用の失敗要因!?」

今回は前回、前々回のコラムを踏襲して今ドキの若者の価値観を見据えて、企業がどのように人材を採用・育成していけばよいかについてまとめてみました。

当社にも多くの企業から「優秀な人材が採れない」「入社しても定着しないし育たない」とのご相談をお受けします。

もちろんイマドキの若者にも原因があることは否めませんが、よくよくお話を伺うと大半の場合「企業側からの価値観の押し売り」が原因のケースが少なくないようです。

今回は若者に対する「価値観の押し売り」が中小企業の人材育成と採用にマイナスの影響を与えていることについてお伝えしたいと思います。

そもそも価値観とは何か?

価値観というのは、過去の体験から得られる感動や不満によって形成されると言われており、育ってきた時代背景に大いに影響されます。

そのため、現在の若者とバブル期の右肩上がりの時代を生きてきた世代が同じ価値観を持っていると考えること自体大きな間違いであり、だからこそ、いつの時代も「イマドキの若者は・・・」というセリフが途絶えないのです。

では現代、新卒で社会に出てくる若い世代が育ってきた環境とそこで形成された価値観はどういうものなのかお伝えします。

新卒で社会に出てくる若い世代の価値観

●社会的背景

まず彼らの大きな価値観の形成要因として考えられるのが、

・出生数の低下と大学数の増加による大学進学率の向上
・受験制度の変化(推薦やAO入試枠の増加)
・上記に伴う、大学入試における競争原理の低下

それによって「競争嫌い」の若者が増殖しました。(1989年の学習指導要領の改訂も大きな要因と考えられます)

それまでの教育現場では、他人との比較で勝ち負けを決めるという相対評価だったのが、絶対評価を重視するようになり、競争を避けて通ることが社会の中で肯定されるようになったのです。

こういった「競争嫌い」の若者は、勝ち負けよりも自分の価値観を大切にしたライフスタイルを好むようになり、その典型が「社会貢献志向」若者の増加とも言われます。

●コミュニケーションツールの進化

社会的背景の他に、もうひとつ注目すべきは、コミュニケーションツールの進化です。彼らは、物心ついた頃から携帯やスマホでのコミュニケーションを主とする世代であり、そこから必要な情報を容易に収集することを得意としています。

SNS(ブログ、Twitter、Facebook、LINE、Instagram等)を通して見ず知らずの人と違和感なくコミュニケーションが取れる反面、口コミなどの事実かどうかわからない情報を鵜呑みにして、それを正解だと決めつけたり、既に正解が用意されていると考えがちで、実体験の感動や不満を持ちにくくなってきました。

このような環境は、価値観を重視した生き方を好むものの、そもそも自分が何を大切にしているのか、大切にしたいのかがわからなくなっている若者を生み出しています。

こういった若者を我々は「自分の好きな草がわからない、草食系」と呼んでいます。

感動や不満を感じる体験が極端に減ってしまうことで起こる現象で、こういった若者はエネルギーの源泉が不明瞭で力強く走ることが出来なくなる傾向があります。

若い世代のために、企業がすべきこと、採用担当者の勘違いではこういった若い世代はビジネス社会で、本当に活躍できないのでしょうか?

答えは「No」です。

但し、重要なのは、こういった若い世代に一方的な会社の価値観を押し付けないことです。

大切にしたい価値観を一緒になって見つけ出し、自信と自覚を見出させ、目標にチャレンジするステップを踏ませることで新たな価値観を植え付けることが可能です。

一方で会社の価値観の押し付けは、採用活動においても散見され、学生と話すとこんな話をよく耳にします。

◇「『自己分析が甘い!』と採用担当者から言われたが、企業の方も自社の分析が甘いと思う」
◇「『企業選びの軸をもっと明確にした方がよい』とアドバイスされたけど、その企業がどんな人材を採用したいのか、結局のところよくわからなかった」
◇「『面接ではホンネで話して下さい!』と指摘されたけど、企業も自社の都合のよい情報しか開示してくれず、ホンネで話しているようには思えなかった」

こういった発言がみられる企業や採用担当者は、自分たちが学生を選ぶ立場にあると勘違いしています。

まさに採用する側の企業の価値観の押し売りです。

これでは、自社に対する志望度は上がるどころか低下の道を辿り、結果的に選考プロセスにおける学生の離脱や、内定を出したとしても承諾してくれない、いわゆる内定承諾率の低下を招きます。

また、仮に採用できたとしても、その後長期間に渡り定着し、活躍する確率は極めて低くなってしまいます。

せっかくコストと労力をかけて採用したとしても、それが報われないのは特に中小企業にとって致命的と言えるでしょう。

人材育成同様に自社の価値観を押し付けず、大切にしていることを一緒に見つけ出し、それが自社で発揮できるかどうかの判断材料となる情報を惜しみなく提供してあげる、そのような採用活動を実践することが重要です。

事実そういった採用活動を実践し、内定辞退率「0」を実現している中小企業も存在しているのです。

「価値観の押し付け」。

自社はどうか?を改めて見直すことをお勧めします。

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