人材採用に関連する仕事をしていると、「キャリア(Career)」という言葉を1日に何度も耳にしたり、発したりします。
私自身も日常的且つ無意識に使用するケースが少なくありません。
辞書で調べると、「キャリア(Career)」とは「職業・技能上の経験、経歴」とあります。
つまり一般的には職を通して得る経験や経歴であり、本来ならば社会人を想定した言葉だということがわかります。
最近この「キャリア(Career)」という言葉の意味が曖昧になってきているように思うのと同時に正社員として働いたことのない学生を対象にして使用されることが非常に増えていることに何となく違和感を感じています。
なかでも「キャリア教育」と称して、大学をはじめとした教育機関が学生向けにカリキュラムを提供しているのは典型的な例であり、関連の授業が行われているわけです。
なかには学部名に「キャリア」という言葉が盛り込まれている大学もあるくらいで、ますますキャリア熱は高まってきているようです。
私の違和感は、前述の通り本来の意味と食い違ってきているということもそうですが、大学が学生にあまり「キャリア、キャリア」と騒がずに学生生活を充実させる指導を徹底して欲しいと思っているところに起因しているようです。
「キャリアビジョンを描け!」「キャリアをデザインしろ!」と言われる学生が可哀想でならないのは私だけでしょうか?
繰り返しになりますが、あくまでも「キャリア(Career)」とは、職業上の体験・経歴であり、正社員経験のない学生にそれを描かせること自体、かなりハードルの高い要求だということ。(アルバイトやインターンシップを体験して職業経歴を得ることは物理的には可能)
むしろ「自分の夢」「目標」を見つけさせ、やそれを達成するために必要なこと、足りないこと、今取り組むべきことは何か?といったことを考えさせ、中長期的に支援していくことが重要だと思います。
そういった中長期的な指導を「キャリア教育」と言うのであればまだしも、「キャリア教育」と言いながら、就職活動に関するテクニカルな指導を行っているケースも少なくありません。
自己分析、ES・履歴書の書き方、面接対策、志望動機の作り方・・・
確かに重要だと思いますが、どうも私には企業が求める(いわゆる)優秀な人材に見えるように学生達にメイクアップの指導をしているようにしか見えません。
時間の経過に伴い化粧は剥げ落ちコおは分かっているのに・・・
このことは企業側の採用にも影響が出てきます。
そういったメイクアップを施した学生が、多数押し寄せてくるわけですから、そりゃ素顔(個性)を見抜くことが難しくなってきているのは容易に想像できます。
本来の「キャリア教育」とは、決して就職活動の指導ではないことは言うまでもありません。
今一度学生ならではの「キャリア(Career)」の本質を考え、見直すべきタイミングだと思う今日この頃です。