以前このコラムで、学生のポテンシャルとは一体何か?というテーマを取り上げさせていただきましたが、先日とある企業の採用担当者とお話をした際に非常に腑に落ちたお話があったのでご紹介したいと思います。
企業向けセミナーで、参加企業の皆さんに私から「御社の考えるポテンシャルは何ですか?」という質問をさせていただいたのですが、その担当者の方は「当社の場合、何かに没頭した経験があるかどうかです」と即答されました。
ちゃんと言語に落とし込まれていて、非常に素晴らしいことだと思いました。
その方は続けて、「当社(私)は、MARCHクラスの大学はちょっと勉強すれば誰でも入学できると思っています。しかしそれ以上に偏差値が高い大学は、一般的にかなり勉強をしなければ入学できないわけですから、自然に勉強に没頭することになります。ですから、当社では旧帝大や私立上位校の学生を積極的に採用するようにしています」と。
話す姿勢も声の張りも堂々としていらっしゃって、自信に満ち溢れてお話しされていたので日常的に採用の現場で実践されているのだと感じました。
更に「今の話はあくまでも勉強についての話で、決してそれだけに限定した話ではありません。スポーツでも、研究でも、ボランティアでも、恋愛でも、アルバイトでもいいんです!とにかく必死に何かに没頭した経験がある学生は、仕事をする上でも集中できるんです。目的もなく、目標も持たずにただ時間を過ごしてきた学生は、やはり社会にでてからも同様な生き方をしがちですからね」と先程よりは優しい口調で続けられました。
周囲の方々も皆さん首を縦に振り、その方のお話に聞き入った様子でした。
私は思わず、「MARCHクラスの大学は誰でも入れるかどうかわかりませんが、上位校採用の理由が明確で分かり易いですね」とコメントをさせていただきました。
残念ながら「学歴フィルター」は存在しているわけで、そういう意味では企業側もブランド志向でになり、明確な理由もなく旧帝大や早慶上智学生を採用しようという姿勢が見受けられます。
また、大手企業・人気企業のようにエントリー数が万単位になる企業では全ての学生と接触を持つということは不可能なので、合理的に考えてやむを得ないのかもしれませんが、そうではない企業までが同様にブランド大学に目を向けるのはどうかと思います。
確かに基礎学力をベースにした統計学上或いは確率論から言うと偏差値の高い大学の学生の方が入社後活躍する可能性が高いかもしれませんが、決して全てがその理論にあてはまるわけではありません(世で活躍する人の全てが上位校卒ではない)。
ただこの担当者が仰る通り、中高を通して勉学に没頭した体験は非常に重要であることは間違いありません。
もちろんそれがスポーツでも、その他の課外活動でも構わないわですが・・・
重要なのは、自社の採用基準として「何かに没頭した体験のある学生」ということを明確にしてそれを実践されているという事実ではないでしょうか。
何の根拠もなく、ただ見栄えや体裁上の理由で上位校採用をしていては、その企業も採用される学生も不幸であると言っても過言ではありません。
学生に「ブランド志向になるな!」と言っている企業も、実はブランド志向だったりすることに違和感を感じずにはいられません。