当社は「ふるさと就職応援ネットワーク」という全国のHR事業者で構成される「ふるさと就職」を支援するネットワークの事務局を務めさせていただいています。
その関係で、ローカルでの採用・就職のお手伝いをさせていただいているのですが、昨今実感しているのは、地元志向の学生が増えているということです。
背景には、交通や通信インフラの整備・発展によって都市圏での就職の必然性が低下しているということもありますが、それ以上に地元に対する愛着があるようです。
特に東日本大震災以降、日本人の多くは地域や家族との絆を重視するようになりました。
また、ブータンのワンチュク国王が提唱する「GNH(Gross national happiness)」等の浸透による「幸福」の概念の変化も影響していると考えられます。
そのこと自体は大変素晴らしいことなのですが、どうも地元を志向する学生のホンネはそれだけではないようです。
私の実感値では、都市圏に進学してきた地方出身の大学生が地元就職を志望する理由の多くは、都市圏よりも地元の方が就職しやすい、つまり内定確率が高いからという印象です。
競争原理上は正しい考え方であり、それ自体を否定しませんが、何となくその流れに乗っかり、我も我もで「地元への貢献」「地域の活性化」を盾に現実逃避をすることは本人にとっても、その地域においても、大局で考えると日本にとってもプラスにはならないのではないでしょうか。
一方で、地方・地元を軽視し過ぎるのも問題だと思います。
「地方には優良企業が少ない」「地元企業では成長できない」「グローバル企業がない」という言葉をよく耳にしますが、確かに絶対数は少ないものの、地方発の上場企業や地方発のグローバル企業は今や珍しくありません。
そういう意味では、エリアに関係なく現在国内外で大活躍している企業の大半は創業期は地域の中小企業だったわけですから。
むしろ、そういった企業を地元から生み出す一翼を担う、或いは自らが奮起して地元のために起業して、世の中に必要とされる価値のある会社を創るのだというくらいの気概が欲しいですね。
私自身、20代のころは地元に対する愛着はほぼ皆無と言っても過言ではない若者でしたので、偉そうなことは言えませんが、「地元への貢献」「地域の活性化」という意志を自ら口にするのであれば単に地元での生活の心地良さを求めるだけの「地元就職」という選択ではないはずです。
どうせなら、「自分が変える」「自分で創る」といった明確な意志を体現すべく「地元就職」を実現して欲しいものです。
「意志のある地元就職」をする学生を増やすと同時に、そういった学生の支援を続けていきます。